[2000/5/23 更新]


マダムの散策     

 [第10回 後編] 上野・目黒不動散策・ダイアモンド鑑定・真葛香山


3.上野散策: 国立博物館・芸大美術館・横山大観記念館・朝倉彫塑館


春の上野には、まずは東京国立博物館で行なわれた国宝展へ、そして、近頃日本画がとても気になる私、芸大美術館での”日本画の100年展”へも。機会がある度に、日本画を見るようにしていますが、やっと少しづつ眼も慣れてきたものの、まだまだ。。

でも、絵から当時の文化や風俗を読み取ることは楽しいですね。そして、なんともいえない日本の色使い、特に草色?(正式には何色というのでしょうか?)や、朱色を見ていると、色についてもっと知りたくなります。


国宝展


さて、もう一人の帝室技芸員でもあった横山大観、彼の住居&制作の場が上野の不忍池畔にあり、横山大観記念館として公開されています。生涯弟子をとらず、制作活動にうちこんだという大観の住まいは、大観の好みの花や木が植えられた中庭のあるひっそりと静かな日本家屋です。


横山大観記念館入口


次に、日暮里駅近く谷中にある彫塑家朝倉文夫のアトリエ・住居であった朝倉彫塑館へ。こちらは、朝倉文夫が芸大を卒業した明治40年に建てられ、その後大正、昭和にも改装されたコンクリート造りの洋館と数寄屋造りが合体した個性的な建物です。天井の高いアトリエから一歩出ると、池のある日本庭園、茶室や和室へと続き、3階には和室の大広間です。

ここの窓から眺めると、屋根には彼の作だと思われる、洋風のオブジェが付いていたりと、ユニークです。彫塑のほかにも、俳句、南画、華道茶道と幅広く活躍されたそうで、そのすべてがこの住まいに反映されたのでしょうね。


朝倉彫塑館


和菓子 岡埜栄泉

 


4.目黒不動散策:  目黒不動尊・五百羅漢寺・目黒雅叙園美術館

最近、日本画マイブームの私は、目黒雅叙園内にある雅叙園美術館へ。

こちらは昭和初期の日本画コレクションで有名であり、また旧目黒雅叙園の建物は、昭和初期のもので豪華絢爛。その部屋の全てが公開されるのは、年に3回だけだそうで、まだ私もチャンスがないのですが、美術館から出たところには、旧雅叙園から移築された”南風階段”があり、こちらは常時見ることができます。古き良き時代の重厚感ある木の階段、日本画の壁画や天井画で飾られ、同じようなクラッシク建築の冨士屋ホテルや日光金谷ホテルにでも迷い込んだようです。

 


目黒雅叙園


雅叙園内の廊下


美術館へのエレベーター
シノワズリー?豪華!



雅叙園から少し足を伸ばすと、目黒不動をはじめ、神社仏閣が点在しています。
そのなかから、中心の目黒不動尊を見た後、五百羅漢寺へ。こちらの木造釈迦三尊と五百羅漢坐像は江戸時代を代表する木彫として都の重要文化財にしていされているとか。木彫の羅漢さんが一堂に会す羅漢堂&本堂は見ごたえあります。


目黒不動


5.ダイアモンド鑑定実習@GIA


JR御徒町駅より


宝石商の街!


GIAはこのビル内



宝石鑑定士をめざして早1年、なかなかのスローペースですが、やっとはじめての鑑定実習にたどり着きました。実習は、御徒町にあるGIAで。今回は、ダイアモンドの鑑定で、実際にダイアモンドをいろいろ見ていきます。

実習に使われるものは、グレイドやカラーは様々ですが、大きさは大体0.3キャラット前後のものです。指輪になっていると0.3ctは何も問題ない大きさですよね。ところが、鑑定作業は実際にピンセットで持ちながら、石のサイズを測ったり、プロッティングといって、どこにどんな小さな傷や内包物があるかを詳しく調べ、正確に記入していく必要があるのですが、最初の数回は、不慣れな私には、ピンセットで持つにも、顕微鏡でいろいろ見るにも、0.3ctはちょっと小さく感じ苦労しました。

さて、私のクラシック映画好きもご存知かと思いますが、今日本の名女優展が三越で開かれています。もちろん先日のオードリーヘップバーン展も見てまいりましたが、西洋東洋問わず、ちょっとレトロだけれど、当時のスタイルは大好きです。これまではあまり日本の古い映画を見る機会がありませんでしたが、今回の展示をみて、原節子あたりからちょっとチェックしてみたいなと思いました。

ゴージャスな女優スタイルを見たあとには、ゴージャスなダイヤの輝きをどうぞ!ということでしょうか?名女優展の出口からは、ダイアモンド展のコーナーへと導かれていました。なんてタイムリーな展示でしょう。ちょうどダイアモンドの鑑定もすこーしばかりわかりかけてきた私、思わぬ出会いにいろいろゆっくり見て回ることができました。一番参考になったのは、ダイアモンドの採掘からカッティング工程をパネルや模型を使って説明されてあったところ。

そして、世界最大級という420ctのダイアモンド原石や、一度見てみたかったカラーダイアモンドの有名な標本”バタフライコレクション”も、展示されていて、さすが三越様!と感謝しながら、見せていただきました。あらためて百聞は一見にしかず、マイモットーです。

.骨董学院 春のコース:  明治美術はWonderful!

春になり、骨董学院の新講座スタートです。今回は、田邉哲人氏による”真葛香山研究”と”明治の美術”に、飛びつくように申し込みました。田邉氏は、真葛研究の第一人者であるとともに、世界的に有名な 真葛コレクターで、今回の授業では、毎回そのコレクションから いくつかを持ってきてくださり、実際に見ることができるとのことです。 なんて素晴らしいのでしょう!

実は、私も、明治もの(ジャポネスリー)に興味をもちはじめたものの、まだまだ勉強中、はじめて、真葛香山の作品に出会ったのは、2年ほど前のことです。偶然、”目の眼”という古美術・工芸の月刊誌に、田邉氏が初代真葛香山について書かれたものを読み、作品の写真を見て、その美しさに感動しました。初代真葛香山(陶芸家 帝室技芸員*) の日光東照宮の眠猫がついた水指、薩摩焼/京焼風で、焼物とは思えないほど精密で美しい藝術品。他に渡蟹がついた水盤、様々な高浮彫の花瓶は息を呑むほどの美しさ。 しかしながら、これら真葛の作品も当時日本ではあまり評価されず、ほとんど海外に渡ってしまい、 日本ではあまり見ることができないとあり、残念に思っていたのです。

さて、4月、まず真葛研究の授業がはじまりました。さずがに第一人者のお話は、 迫力があります。ふと、NYで受けたハプスブルク博士のファベルジェのクラスを思い出しました。でも、なぜか、今回この講座を受けるのは、真葛コレクターという上品な初老の紳士の方と、 私の2人だけ。夜のクラスだからなのでしょうか??少しもったいないような。。。

初回の授業では、主に初代真葛作品を見分けるポイントである銘、作品様式を、壷など手に取りながら、教えていただきました。 

海外に渡った真葛作品はその後も人気が衰えず、今ではヨーロッパやニューヨークではあまりの人気にオークションでの値段もかなり高額になっているそうです。 そんななか、田邉氏が長年かけて買い戻されたコレクションは、かなりの数になるそうです。現在、日本の美術館などにも、いくつか貸し出し中なのだそうですが、来年には、日本でも大きな展覧会が予定されているそうです。明治美術の素晴らしさを再認識されるようになったとか。

来年予定されている展覧会は、横浜美術館で田邉氏のコレクションを中心とした明治美術の展覧会。そして、国立近代美術館では、アラブの有名な真葛コレクターのコレクションも、 公開される予定だとか。こちらのアラブのコレクションは、昨年アメリカのデラウェア州でも公開され、 見てこられた前出のNYUマダムもおすすめされています。 興味を持たれた方は、どうぞお楽しみに!

(ご参考まで)

帝室技芸員: 田邉先生によると、当時帝室技芸員に選ばれることは、
現在の人間国宝に選ばれることよりもすごいことであったとか。

*”目の眼”:  ご存知の方も多いかと思いますが、古美術・工芸の月刊誌で、
毎回様々なテーマが取り上げられていて、写真も美しく、また美術展や古美術商・骨董市やオークションのスケジュール紹介などもあり、役立つ一冊。 

今回登場した号: 平成10年12月号(No.267)、”初代真葛香山のジャポニズム”、 ”慶事の引出物 ボンボニエール”、”王朝の仏画”などが特集されています。

7.今回マダムが訪れた展覧会:

Exhibition Title

 Museum Name

日本国宝展 国立博物館
日本画の100年 東京芸大美術館
錦絵と写真に見る明治天皇 明治神宮宝物展示室
丸紅コレクション 日本橋高島屋
萬野美術館展 日本橋三越
足立美術館展 日本橋高島屋
オードリーヘップバーン展 日本橋三越
名女優展 日本橋三越
Andy Warhol展 Bunkamuraミュージアム
異国の風展 たばこと塩の博物館
描かれた女性の姿展 目黒雅叙園美術館

 


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